以前NVIDIAの新しいGPUを紹介しましたが、NVIDIAのGPUはPCで主に利用されると思います。
しかし、恐らくAI(正確には機械学習の推論)を行う回数で言うと圧倒的にスマートフォンの方が多いと思います。
今回はスマートフォン等に搭載されるチップがAIをどう処理するかを紹介していきましょう。今回はどのチップもPVがあったので全編PV付きでお送りします。
Snapdragon 845
スマホ用チップの雄、QUALCOMMの最上位チップです。Androidのハイエンド機は一部の例外を除いてほぼこのチップを使っていると言っても過言ではないかと。
ただし、最近のチップの中では比較的AI系の性能は控えめで、どちらかというと従来からのCPUやGPUといった部分の強い正統派のチップです。
AIに対する対応はCPU+GPU+DSPで行い専用回路は持ちません。
この対応だと、AI用の回路がない分、チップに余裕ができるので、CPUやGPUといった汎用的な回路を強化できる利点があります。
一方特にCPUなどは汎用的な処理ができる分、大量のAI向け演算などは処理量の点でも、電力効率の点でも苦手と言えます。
このあたりAIに関連する処理が、全スマホ利用時間のうちどの程度を占めるか、メーカーによる考え方の違いとなって表れてきます。
QUALCOMMとしては音声認識など局所的にAIを使うことはあっても、全利用時間に占める割合はさほど高くないと踏んでいるのではないでしょうか。
とはいえ、AI性能は全世代のSnapdragon 835比で3倍をうたっていますので、CPUやGPUの性能が30%程度の向上であることを加味すると力を入れてきているなというのはあります。
ところでSnapdragon 845にはWiFiの接続が16倍高速になるという機能向上もあり、性能面で言うとそちらが一番の底上げであったり。
そちらも個人的には気になります。
Kirin 980
最近登場した中国Huawei製のチップ。恐らくHuawei製の端末以外採用されていない・・・はず。
QUALCOMMとは真逆で積極的にAI系の機能を盛り込んでくるメーカーで、昨年のKirin 970からAI系の回路を盛り込んできています。
Kirin 980では回路規模を倍増させており、AI系の性能はKirin 970の2倍以上になっていると思われます。
とはいえ、CPU性能も75%向上したらしく、AI系の性能を特別に向上させた、というよりは全般的に2倍程度になるようにチップを設計したようです。
中国メーカーの技術力の伸びを示すような、かなりアグレッシブな性能のあげ方です。
Apple A12 Bionic
日本で一番普及しているiPhoneの最新版に搭載されているチップ。
Appleは他の会社と違ってちゃんと素の演算回数を公表してくれており毎秒5超回の演算ができます。
全世代からAI系の機能をチップに入れてきていますが、前世代と比較して9倍の性能になっています。
こうして他のチップと比較してみるとAppleが全力でAI系を増強してきていることがわかります。
実はAppleは自社生産かつ大量生産なので、他の会社よりもチップにお金をかけることができます。
なので、チップに他社より多くの機能を入れることができ、AI系の機能を強化する余裕があるのかもしれません。
Movidius NCS
IntelがAIチップベンチャーを買収して作ったUSBデバイス。1Wで100GFlopsです。
専用設計で100GFlopsというのは若干微妙な気もしないではないですが、USBインターフェイスとかも入っていることも考えるとこんなものでしょうか。
このデバイス、USBで刺すと使えるので後付けできるのが最大の魅力です。しかも複数台刺して性能向上なんてこともできるようです。
Raspberry Piに刺して使えるなどD.I.Yでデバイスが作れそうな予感が大変します。
というかIntelもCPUにそういう系の機能つければいいのにと思わなくもないです。
まとめ
各メーカーで取り組み方に差はみられるものの、基本的にどのチップメーカーもAI強化に舵を切っていることがわかります。
現在はカメラ、音声認識などでの利用が多いようですが、AIを使えば便利になるシーンは多いと思います。